ケミビル705 知らなくても楽しい、知ったらもっと楽しい『愛媛の建築』の世界

松山・ケミビルで不定期に開催されているイベント「知らなくても楽しい、知ったらもっと楽しい○○の世界」。

10月11日の第4回目となる同イベントのテーマを『愛媛の建築』としてお招きいただき、工務店の設計者・宮内健志さん、建築系編集者・宮畑周平さんとともに、愛媛の建築についていろいろ話してきました。

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私は戦後愛媛の建築史を概観し、丹下健三愛媛県民館や今治市庁舎に代表される、建築家による庁舎や公共建築の時代(1950-70年代)、住友に起源をもち愛媛にゆかりのある日建設計をはじめとする組織設計事務所による公共建築整備の時代(1980-90年代)と20世紀の流れをざっくりと整理。

それから21世紀に入り、ロープウェイ街や道後、花園町といった景観整備が行われるようになり、それとあわせて屋台やキッチンカーなどによるマイクロパブリックスペースの出現や、あるいは道後オンセナートなど、公共空間の再整備とその活用が行われるようになったということを概説。
結果的に公共建築・公共空間の流れを確認することとなったが、公共への投資の方向の変化に伴い、各時代を代表する建築のあり方や評価のされかたが変わってきたこと、とりわけ近年には建築単体からから公共空間といった面的な整備へとシフトしていることなどを実際の建築作品とともに整理。


宮内さんは建築への偏愛を語るとともに、それらを分類して解説。松村正恒の松山での独立時代のアノニマスな作品を探す、いわば「隠れた松村建築」発掘の愉しみや、松山のトマソンについて。建築のもつ幅の広さや魅力が伝わる内容だった。
宮畑さんは自身が住み暮らす弓削島の民家や、古民家をリノベーションした自邸兼店舗を紐解き、地域に根ざしたデザインについての語り。愛媛と一口にいっても地域ごとの多様性があり、その個性にそれぞれ魅力がある。

その後の会場を交えた質疑では地域の材料のあり方についても触れられた。地域材の使用についても、ただ使えば良いという短絡的なものではないなということを理解できたのは大きな収穫だった。瀬戸内で多くみられる焼杉についても掘り下げられたが、またじっくり考えてみたい素材である。

 

それにしても、会場となったケミビルの展開がおもしろい。様々な場や分野をつなぐ場所として育ちつつあるなー。

 

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ehime-architecture.themedia.jp