高知の公共空間の「あいまいさ」と「しなやかさ」

昨年末から仕事で何度も高知を訪れているが、高知市内を歩いていると公共空間の使い方に感心することが多い。

以前からぼんやりとそんな認識は持っていたものの、街路市や屋台など高知の様々な場所で目にすることから、高知に根付いた文化としての強さがあるようにあらためて感じた次第だ。

そのことについてまとめておきたい。


街路市

日曜市(2018年撮影)

高知の街路市は日曜市が有名だが、水路の上で開かれる火曜市など、それぞれの場所で週4日開かれている。
日曜市では片側2車線を歩行者天国とし、農産物や果物、花、土佐打刃物や竹籠などの工芸品、雑貨などが軒を連ねる。江戸(1690年)以来の歴史があるそうだ。


屋台

夜に出現する屋台(2018年撮影)

屋台餃子の元祖「安兵衛」は昭和45年創業(2018年撮影)

追手筋と交差するグリーンロード、通称「屋台ロード」には夜ごとに屋台が出現する。屋台餃子が有名。

 


青空将棋

植栽が木陰と「囲い場」を生み出している

高知城追手門すぐのポケットパークのようなちょっとした広場は、いつも将棋を指す人で賑わっている。近くの物置にパイプ椅子を収納しているのかも。

 


ひろめ市場

空間の広狭の変化や迷路的なところも界隈性があり面白い

ひろめ市場は、お酒の飲めるいわゆる「屋台村」であり、カツオのたたきをはじめとする飲食店はもちろん、鮮魚・酒・惣菜、雑貨やお土産など幅広い物品を扱う店舗が入居している。
ここを公共空間というには語弊があるが、1998年のオープン以来、25年以上営業を続ける”成功”の要因には、空間が公共的な振る舞いをしていることが挙げられるのではないか。
具体的には、各店舗が席を管理するのではなく市場全体で「相席」が基本になっていることが挙げられるだろう。それが家族やグループで席を確保して様々な店舗の味を楽しめるなど回遊性のあるデザインになっており、市場全体の魅力を高めることに繋がっているように思われる。

 

高知の公共空間から学ぶこと

高知で魅力的に捉えられた空間を並べてみると、それらに共通する点として、「公」の場を「私」的に利用する(また、ひろめ市場のように「私」的な場が「公」的に利用される)という境界のあいまいさがある。また、曜日や時間によって、あるいは屋台のように物理的に変化するという可変的・弾力的なしなやかさがあるように思う。
そこには恐らく、法規や制度上のグレーな部分を許容してきたような、ある種のおおらかさや包摂性もあるだろうが*1、しなやかさがあるからこそ、ここまで持続してきたようにも思える。

いずれにしても、そうして根付いた公共空間やその文化が、高知のまちを豊かにし、観光客にとっても魅力的に映っていることには違いない。

*1:実際には、屋台の無許可営業が問題になり、2024年度の追手筋南側の中央緑地への移転を目指すそうだ。 高知新聞 2021.3.20 https://www.kochinews.co.jp/article/detail/442863