えひめの名建築とは何か?

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愛媛県美術館 会議室にて行われた「えひめ名建築発掘発信事業」の第1回委員会に、矢野青山建築設計事務所の矢野さんとともにアドバイザーとして出席。

 

建築の地域資源化や観光まで視野に入れた、愛媛県内の近現代建築の発掘とリスト化を主な目的にしている本事業。
今回はこれまでに市町や建築士会にヒアリングしてかき集めた200件超の戦後の愛媛の建築一覧を基に、今後の方針などについて議論を行った。


地域の建築をリスト化する。このような際には著名な「建築家」の「作品」を挙げてゆく方法がある。ただ、これはある種の偏った見方だと思うし、そのようなやり方ではリストからこぼれてしまうような、しかしキラリと光る愛媛ならではの地域性や物語性を有するような建築をいかに取り上げるか?その視点や方法とは?


ーー私自身はそんなことを考えていたが、どの委員の先生方も同様に既存のやり方で良いとは思っておらず、活発な意見交換がなされた。もちろん、建築家の作品を取り上げるのは手法のひとつであるし、その点をまとめることも重要であるのだが、地域発であるからには、中央的な建築メディア視点を盲信するのは危険であろう。


ある委員の先生の発言にもあったが、愛媛の近現代建築史はあらためて洗い直して整理すべきだろう。そうした通史的な観点から見えてくる対象やテーマがあるように思う。

仮事務所へ引越

事務所の建て替えに伴い、仮事務所へ引越。

40年間のいろいろなものも思い切って処分。小さい会社。それでも、段ボール箱は約200箱。

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ダンススタジオとして使われていた1階は壁全面が鏡張り。昭和感あふれる事務所だけど、窓が多く風通しが良いので今のところ快適です。

谷中、街ぐるみの宿 HAGISO / hanare

以前から「アルベルゴ・ディフーゾ」について興味を持っている。イタリアで「散在する宿」のこと。宿泊や食事がホテルで完結するのではなく、街で部屋のカギを受け取り、食事もまちなかのレストランでとるようなスタイル。

東京では、谷中の街をホテルに見立てた、HAGISOのhanareに宿泊した。
HAGISOの2階が宿=hanareのレセプションになっており、こちらで鍵を受け取る。宿泊は、2分ほど歩いたところにあるhanare。朝食はHAGI cafeで。hanareにも共用のシャワーはあるが、チケットで近くの銭湯に行くこともできる。

なんだか懐かしい街並みが残る谷中の「街に泊まる」宿泊体験が楽しかった。谷中っていうのもいい。松山でもこんなのができるといいな。

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hanareのレセプションはHAGISO2階にある

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HAGISO。築60年の木造アパートを改修した「最小文化複合施設」

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HAGISOから谷中の路地を歩いて…

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hanareのエントランス

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HAGISOのレストラン HAGI CAFE。朝食はここでいただいた。

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朝食は大人気で宿泊以外の人も多数。

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夜は歩いて銭湯を訪れた。

 

友人のアトリエを訪ねて

東京へ。

十河彰・麻美が共同で主宰するSOGO建築設計と、増田圭吾による、構造設計を中心としたMASDをそれぞれ訪問。ともに同世代の建築家の事務所である。

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SOGO建築設計

千駄ヶ谷にあるSOGO建築設計の事務所はマンションの最上階をリノベーションしたもの。最上階から四方が見渡せる物件のポテンシャルを見抜き、スケルトンにした上で居心地の良さやワークスペースとしての効率性など、微細にわたる検討とデザインがなされている。

www.sogo-aud.com

 

夕方にはMASDを訪問。そのまま荒木町へ。ワインをいただきいろいろ話す。ごちそうさまでした。

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www.masd.jp

第0回 ローカルアーキテクトミーティング

4月。Mさんにお声掛けいただき、第0回 ローカルアーキテクトミーティングへ。愛媛県内の若手の設計者で意見を交換する会である。

場所は、この日がオープンだというAkira Yamaguchi Studio。

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三津の商店街にあるのだが、山口さんはこの場を作る過程で三津の人たちとも顔なじみになり、地域にすっかり馴染んでいるようだった。

 

午前中は、私のガイドで三津の建築や面白い場所を案内。自分の仕事を含め、古建築を利用した飲食店や物販店の新規開業が増えていることにあらためて気付かされる。

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4者が出店する「みつのほ」(4/26開業)がプレオープンしていた

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改修工事中の現場も見せていただいた


午後は6人で建築設計事務所の仕事について――例えば同業他社の連携や、設計以外の仕事への関与など、いろいろと話し合った。
話しながらあらためて思ったのは、私は建築や場づくりといった自身の仕事を通じて、人や街にポジティブな変化が起こることに寄与したいということ。そのための研鑽や議論は惜しまないでいこう。

スペイン旅行記⑧ ビルバオのバルめぐり -バスク(3)

前回までの記事はこちら。

スペイン旅行記① 準備編

スペイン旅行記② アルハンブラ宮殿 -グラナダ

スペイン旅行記③ 飛ばない、飛行機 -バルセロナ(1)

スペイン旅行記④ ガウディ建築巡礼とカタルーニャ音楽堂 -バルセロナ(2)

スペイン旅行記⑤ ミシュラン3つ星「ABaC」でランチ -バルセロナ(3)

スペイン旅行記⑥ サン・セバスティアン -バスク(1)

スペイン旅行記⑦ ビルバオ・グッゲンハイム美術館とビルバオの街 -バスク(2)

 

バスクは雨が多いそうだ。グラナダバルセロナの快晴とはうって変わって、サン・セバスティアンビルバオもぐずついた空模様だった。

 

それでも、ビルバオは印象に残る街になった。私は、訪れた街に対して「住める」かどうかを評価するようなところがある。評価というと語弊があるし、それだけが軸であるわけではないが、滞在していると時にふと「住んでみたい」と思わせる街があり、ビルバオはそのひとつだった(これは妻とも意見が一致した)。

 

それがどのあたりに起因するかといえば、まず、都市的であって、街の規模がちょうどよいところだろうか(東京やニューヨークは巨大すぎる)。そして、観光地化しすぎておらず適度に生活感があるところも良い。至る所に広場や公園があることや、旧市街など歴史を感じさせるところもポイントだ。さらに、美術館などの新たなものが古いものとぶつかりながらも調和しているところも挙げられるだろう。

 

そういう街の「地」がある上で、ビルバオは買い物やバルめぐりが楽しかった。バルの客層も観光客だけではなく地元の利用も多いように見受けられ、その日常に根差した雰囲気も良かった。

ビルバオで訪れたバルやお店を記録して紹介したい。

 

ビルバオ 中心市街地

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La Viña del Ensanche(ラ ビーニャ デル エンサンチェ)

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La Viña del Ensanche(ラ ビーニャ デル エンサンチェ)

ラビーニャデルエンサンチェ。中心市街地にある有名店。ホセリートの生ハムを使用。美味。

 

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El Globo (エル グロボ)

エル・グロボ。ラ ビーニャの近くにありこちらも人気。

 

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グラネル ビルバオ

スパイス、コーヒー豆、ハーブティーなど全て計り売りで買うことができるお店。ついいろいろ買ってしまった。

 

エバ広場のバル

夜は旧市街に向かい、バル巡りを楽しんだ。地下鉄を降りるとヌエバ広場はすぐそこ。

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エバ広場を建物と廻廊が取り囲み、廻廊にバルが並ぶ。雨を気にせず楽しむことができる。

 

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Gure Toki (グレトキ)

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Gure Toki(グレトキ)

グレトキ。人気店の模様。インテリアの感じも良かった。焼き鳥風のピンチョスも。

 

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La olla (ラ オッラ)

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La olla (ラ オッラ)

ラ オッラ。ここも人気店のようでおいしかった。

 

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Zaharra (ザハラ)

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Zaharra (ザハラ)

ワインバル、ザハラ。

 

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Cafe Bilbao (カフェ ビルバオ)

カフェビルバオ。老舗店の模様。

 

ピンチョスをいろいろつまみながら飲む。ハシゴして、それぞれのお店の味や個性を楽しむ。どの店もおいしくて、活気にあふれていた。

スペイン最後の夜も楽しいひと時を過ごすことができた。

 

スペイン旅行記⑦ ビルバオ・グッゲンハイム美術館とビルバオの街 -バスク(2)

前回までの記事はこちら。

スペイン旅行記① 準備編

スペイン旅行記② アルハンブラ宮殿 -グラナダ

スペイン旅行記③ 飛ばない、飛行機 -バルセロナ(1)

スペイン旅行記④ ガウディ建築巡礼とカタルーニャ音楽堂 -バルセロナ(2)

スペイン旅行記⑤ ミシュラン3つ星「ABaC」でランチ -バルセロナ(3)

スペイン旅行記⑥ サン・セバスティアン -バスク(1)

 

スペイン7日目。10:30にサン・セバスティアンのターミナルを出発したバスは緩やかな山の中を進む。途中、一つの町で人を拾った後、正午前にビルバオに到着。停車場の近くにはサッカースタジアムがある。

 

ビルバオ

ビルバオは比較的大きい街だ。得ていた情報では35万人というが、トラムや地下鉄もあり、規模感でいうと日本の100万都市のような印象。*1

ここを訪れたのはほかでもなくビルバオグッゲンハイム美術館(1997)を訪れるためだ。フランク・O・ゲーリーの代表作であり、20世紀最後の世界的な傑作だろうと思っていた。

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ビルバオグッゲンハイム美術館

ビルバオは美術館が都市再生のシンボルになっているところも興味深い。美術館の生まれた背景には、スペイン屈指の工業都市として栄えていたにもかかわらず、衰退しスラム化していたことが挙げられる。

そのビルバオが工業からサービス業への転換を図った際、バスク州政府が実施した「15億USドル」という再開発プロジェクトは、グッゲンハイム美術館の建設以外にも、新空港の建設や港湾の拡張、地下鉄などのインフラ整備など多岐にわたっている。

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地下鉄の入り口

その際に、建築家やデザイナーを適切に起用しているところも特筆すべきだろう。地下鉄の設計をノーマン・フォスターに委嘱したほか(地下鉄駅に氏のサインがあった)、地区の再開発に磯崎新、歩道橋の建設にサンティアゴ・カラトラバを招致するなど、建築家やデザイナーの手腕が近代的な都市景観に寄与している。

 

ビルバオグッゲンハイム美術館


グッゲンハイム美術館ビルバオの街の中でも景観上の特異点になっているが、違和感をおぼえることはなかった。パピーやママンなどのアートが迎えてくれる。

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ジェフ・クーンズ パピー(Puppy)

内部もまたぐにゃぐにゃではあるものの、アトリウム状のホールを中心に、そこから展示室が放射状に延びるという明快な構成で、想像していたものよりおとなしい印象。

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グッゲンハイム美術館 ホール

展示は、リチャード・セラ、建築、映像、ジャコメッティピカソ、モネ、ゴッホ、ウォーホルなど。先入観として、この建築ではなんとなく展示がし辛いのではないかと思っていたけれど、特にリチャード・セラの巨大なサイト・スペシフィックな作品がごろんと転がっている感じなども良く、印象が覆されたような感じだった。

 

スペイン旅行記⑧に続く。

*1:後で調べると都市圏としては約100万人ほどのようだ。