スペイン旅行記⑧ ビルバオのバルめぐり -バスク(3)

前回までの記事はこちら。

スペイン旅行記① 準備編

スペイン旅行記② アルハンブラ宮殿 -グラナダ

スペイン旅行記③ 飛ばない、飛行機 -バルセロナ(1)

スペイン旅行記④ ガウディ建築巡礼とカタルーニャ音楽堂 -バルセロナ(2)

スペイン旅行記⑤ ミシュラン3つ星「ABaC」でランチ -バルセロナ(3)

スペイン旅行記⑥ サン・セバスティアン -バスク(1)

スペイン旅行記⑦ ビルバオ・グッゲンハイム美術館とビルバオの街 -バスク(2)

 

バスクは雨が多いそうだ。グラナダバルセロナの快晴とはうって変わって、サン・セバスティアンビルバオもぐずついた空模様だった。

 

それでも、ビルバオは印象に残る街になった。私は、訪れた街に対して「住める」かどうかを評価するようなところがある。評価というと語弊があるし、それだけが軸であるわけではないが、滞在していると時にふと「住んでみたい」と思わせる街があり、ビルバオはそのひとつだった(これは妻とも意見が一致した)。

 

それがどのあたりに起因するかといえば、まず、都市的であって、街の規模がちょうどよいところだろうか(東京やニューヨークは巨大すぎる)。そして、観光地化しすぎておらず適度に生活感があるところも良い。至る所に広場や公園があることや、旧市街など歴史を感じさせるところもポイントだ。さらに、美術館などの新たなものが古いものとぶつかりながらも調和しているところも挙げられるだろう。

 

そういう街の「地」がある上で、ビルバオは買い物やバルめぐりが楽しかった。バルの客層も観光客だけではなく地元の利用も多いように見受けられ、その日常に根差した雰囲気も良かった。

ビルバオで訪れたバルやお店を記録して紹介したい。

 

ビルバオ 中心市街地

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La Viña del Ensanche(ラ ビーニャ デル エンサンチェ)

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La Viña del Ensanche(ラ ビーニャ デル エンサンチェ)

ラビーニャデルエンサンチェ。中心市街地にある有名店。ホセリートの生ハムを使用。美味。

 

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El Globo (エル グロボ)

エル・グロボ。ラ ビーニャの近くにありこちらも人気。

 

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グラネル ビルバオ

スパイス、コーヒー豆、ハーブティーなど全て計り売りで買うことができるお店。ついいろいろ買ってしまった。

 

エバ広場のバル

夜は旧市街に向かい、バル巡りを楽しんだ。地下鉄を降りるとヌエバ広場はすぐそこ。

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エバ広場を建物と廻廊が取り囲み、廻廊にバルが並ぶ。雨を気にせず楽しむことができる。

 

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Gure Toki (グレトキ)

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Gure Toki(グレトキ)

グレトキ。人気店の模様。インテリアの感じも良かった。焼き鳥風のピンチョスも。

 

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La olla (ラ オッラ)

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La olla (ラ オッラ)

ラ オッラ。ここも人気店のようでおいしかった。

 

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Zaharra (ザハラ)

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Zaharra (ザハラ)

ワインバル、ザハラ。

 

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Cafe Bilbao (カフェ ビルバオ)

カフェビルバオ。老舗店の模様。

 

ピンチョスをいろいろつまみながら飲む。ハシゴして、それぞれのお店の味や個性を楽しむ。どの店もおいしくて、活気にあふれていた。

スペイン最後の夜も楽しいひと時を過ごすことができた。

 

スペイン旅行記⑦ ビルバオ・グッゲンハイム美術館とビルバオの街 -バスク(2)

前回までの記事はこちら。

スペイン旅行記① 準備編

スペイン旅行記② アルハンブラ宮殿 -グラナダ

スペイン旅行記③ 飛ばない、飛行機 -バルセロナ(1)

スペイン旅行記④ ガウディ建築巡礼とカタルーニャ音楽堂 -バルセロナ(2)

スペイン旅行記⑤ ミシュラン3つ星「ABaC」でランチ -バルセロナ(3)

スペイン旅行記⑥ サン・セバスティアン -バスク(1)

 

スペイン7日目。10:30にサン・セバスティアンのターミナルを出発したバスは緩やかな山の中を進む。途中、一つの町で人を拾った後、正午前にビルバオに到着。停車場の近くにはサッカースタジアムがある。

 

ビルバオ

ビルバオは比較的大きい街だ。得ていた情報では35万人というが、トラムや地下鉄もあり、規模感でいうと日本の100万都市のような印象。*1

ここを訪れたのはほかでもなくビルバオグッゲンハイム美術館(1997)を訪れるためだ。フランク・O・ゲーリーの代表作であり、20世紀最後の世界的な傑作だろうと思っていた。

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ビルバオグッゲンハイム美術館

ビルバオは美術館が都市再生のシンボルになっているところも興味深い。美術館の生まれた背景には、スペイン屈指の工業都市として栄えていたにもかかわらず、衰退しスラム化していたことが挙げられる。

そのビルバオが工業からサービス業への転換を図った際、バスク州政府が実施した「15億USドル」という再開発プロジェクトは、グッゲンハイム美術館の建設以外にも、新空港の建設や港湾の拡張、地下鉄などのインフラ整備など多岐にわたっている。

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地下鉄の入り口

その際に、建築家やデザイナーを適切に起用しているところも特筆すべきだろう。地下鉄の設計をノーマン・フォスターに委嘱したほか(地下鉄駅に氏のサインがあった)、地区の再開発に磯崎新、歩道橋の建設にサンティアゴ・カラトラバを招致するなど、建築家やデザイナーの手腕が近代的な都市景観に寄与している。

 

ビルバオグッゲンハイム美術館


グッゲンハイム美術館ビルバオの街の中でも景観上の特異点になっているが、違和感をおぼえることはなかった。パピーやママンなどのアートが迎えてくれる。

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ジェフ・クーンズ パピー(Puppy)

内部もまたぐにゃぐにゃではあるものの、アトリウム状のホールを中心に、そこから展示室が放射状に延びるという明快な構成で、想像していたものよりおとなしい印象。

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グッゲンハイム美術館 ホール

展示は、リチャード・セラ、建築、映像、ジャコメッティピカソ、モネ、ゴッホ、ウォーホルなど。先入観として、この建築ではなんとなく展示がし辛いのではないかと思っていたけれど、特にリチャード・セラの巨大なサイト・スペシフィックな作品がごろんと転がっている感じなども良く、印象が覆されたような感じだった。

 

スペイン旅行記⑧に続く。

*1:後で調べると都市圏としては約100万人ほどのようだ。

営農型ソーラーシェアリング施設 完成披露式

仕事でお手伝いをしたソーラーシェアリング施設の完成披露式へ。

メガソーラーも様々なところで目にするようになった。メガソーラーには、広い土地にずらりと並べられた様子からも新たな景観問題となっている側面があると認識しており、さらには住民とのトラブルなども見聞きしていたので、初めにこの話を聞いた時には、慎重に進める必要があると思っていた。

しかしこのソーラーシェアリング施設は、太陽光発電のパネルの屋根の下でシキミを育てる「営農型」の発電施設として整備されたもので、農作物が育てられるよう太陽光パネルも高く持ち上げ、日光が届くようにパネルは適宜抜かれている。事業者も、地域とともに運営を行う形を模索し続けているようだ。このソーラーシェアリングも農地法の枠組みをうまく利用した形ともいえるかもしれない。

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完成して訪れると、地域の方々が集えるような場所も設えるなどの配慮もあって、地域住民の方々からも喜びの声を聞くことができた。

放牧地といえば聞こえはよいが荒れ果てた山を見ていたので、その山がこのように整備された様子を見ると、関係者の誰もがポジティブな印象を抱いたように思う。実際、昨年の豪雨災害でこの山も崩れ道が寸断されてしまったが、それを元に戻すだけでも意義はある。

このような施設は実際に稼働してからが大事であることはいうまでもないが、その様子を陰ながら見守っていたいと思う。

スペイン旅行記⑥ サン・セバスティアン -バスク(1)

前回までの記事はこちら。

スペイン旅行記① 準備編

スペイン旅行記② アルハンブラ宮殿 -グラナダ

スペイン旅行記③ 飛ばない、飛行機 -バルセロナ(1)

スペイン旅行記④ ガウディ建築巡礼とカタルーニャ音楽堂 -バルセロナ(2)

スペイン旅行記⑤ ミシュラン3つ星「ABaC」でランチ -バルセロナ(3)

 

スペイン六日目・七日目はバスクで過ごすことにしていた。目的はサン・セバスティアンをはじめとする食、そして、ビルバオのグッゲンハイム。

 

バルセロナ・サンツ駅を7:30に出発。電車は緩やかな丘を進んでゆく。アンダルシア(グラナダマドリッド)で目にした車窓の景色とは明らかに異なり、ヒツジの放牧なども見られる。13:00にサン・セバスティアン着。

 

ホテルにチェックインし、旧市街へ。閑散期のためか、けっこう閑散としていた。それでも3軒をはしごする。

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Lasala Plaza Hotel(ラサラプラザホテル)はコンパクトな規模でスタイリッシュ。また泊まりたい

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ディナーは、旧市街のKokotxa (ココチャ)へ。バルセロナのABaCと比べるとエンターテインメント要素は少ないが、とても美味しかった。

 

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個人的な一番は鱈のグリルにピルピルというポテトソースをかけたもの。バスクの伝統的な料理(をアレンジしたもの)だそうだが、鱈のゼラチンが独特の食感を生み出している。

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Grilled cod Kokotxa

サービスの感じもよく、勧めてくれたワインもおいしかった。

 

スペイン旅行記⑦に続く。

スペイン旅行⑤ ミシュラン3つ星「ABaC」でランチ -バルセロナ(3)

前回までの記事はこちら。

スペイン旅行記① 準備編

スペイン旅行記② アルハンブラ宮殿 -グラナダ

スペイン旅行記③ 飛ばない、飛行機 -バルセロナ(1)

スペイン旅行記④ ガウディ建築巡礼とカタルーニャ音楽堂 -バルセロナ(2)

 

スペイン五日目。朝はゆっくり起床し、ホテルのベランダで朝食。建物は皆中庭に向けベランダを設けていて、ゆったりした作り。

午前中は地下鉄でモンジュイックへ。ミースの「バルセロナパビリオン」巡礼である。

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1929年のバルセロナ万国博覧会のドイツ館として建設

この近くで個人的におもしろかったのが、近くにあったラスアナレスショッピングセンター。闘牛場からショッピングセンターへのリノベーション/コンバージョンだという。外観は残しながら、内部は一新。このような方法もありなのでは。

(追記)後で知ったのだが、設計はリチャード・ロジャースによるそうだ。2011年。

 

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ロスアナレスショッピングセンター

 

スペイン旅行はざっくりいえば「建築」と「食」をテーマにまわったのだが、スペインでの食事はどれも印象的でよい思い出になった。

バルセロナで訪れたのが、ミシュラン三ッ星のレストラン「ABaC」。一言でいうならば「おいしくて楽しい体験」だった。

 スペインでは一般的にディナーよりもランチに重きを置き、そしてスタートは14時頃と遅い。

この日も予約は一番早い時間の13:30から。訪れると早速、厨房のツアーがスタートした。

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左のイケメンがこのレストランの若手カリスマシェフ、ジョルディ・クルス

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一皿目のアペリティフは、大きなサボテンの針に刺された状態で登場した。シャンパンを片手に厨房を巡りながら、それぞれの場所で目の前で調理されたものがちょこちょこと提供される。そんなメニューが5、6品続いた。

 

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そうして通されたテーブルはとてもゆったりとした配席。ゆっくりと、しかし間を空けないいい感じのペースで一口サイズの料理が次々と提供される。

 

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途中にはわさびを付けての照り焼きバーガーや海苔にマグロを乗せた寿司風のものなども登場。驚きがあって、楽しくて、おいしい。エンターテインメント。

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この蝋燭もただの明かりとしてではなく、実はイベリコの脂でできたもので、溶けた「蝋」をパンのバターのようにつけて味わうもの。

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気がつくともう17時前。三時間、長!22品!多!でもとてもゆったりできて、とてもいい経験になったのでした。

 

スペイン旅行記⑥ に続く。

今治「3.11以降の私(たち)」とイマバリカラーショー2019

3月。今治を訪れた。

 

「3.11以降の私(たち)」

今治ホホホ座にて、「3.11以降の私(たち)」観劇。

入場料を支払う代わりにそれぞれが野菜を持ち寄って入場するというスタイル。

今治ホホホ座の中に設営されたテントを舞台に、250km圏内による『地震の話』と『暴想』を上演。その後、3グループに分かれ、演劇の感想をシェアし、震災のことなどを話し合う。みんなが持ち寄った野菜は炊き出しとしてみんなに振る舞われた。

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250km圏内の黒田真史さん。みんなが持ち寄った野菜

炊き出しを食べながら、震災後に仕事で東北を訪れていた青砥穂高さんの話を聞いた。

 

あの地震が起こった時、私は仙台にいた。そして松山に戻ってから少しずつ、東北で起こり、体験してきたいろいろなことを忘れてきているように思う。
毎年3月になるとその時のことを思い出すが、演劇というある種の詩的な表現を目の当たりにし、さらにそこで出会った知らない人と震災について話してみることは貴重な機会になった。
震災の直接的な被害を受けていない愛媛でも、その人の意識や生き方に変化を与え、ある意味では被害者といえる人たちがいる。また、東北ではなく、離れた愛媛だからこそ話せることもある。

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IMABARI Color Show 2019

今治ホホホ座を後にして今治市公会堂へ。今治タオルの品質を支える染色技術を展示した「イマバリカラーショー2019」を訪れる。
公会堂の1006席(うち母子鑑賞室4席)の客席を利用した、1000色の布を用いたインスタレーションを見学。デザインはエマニュエル・ムホー。

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ステージから客席を見るという逆転したスタイルがおもしろい。公会堂が1000席であることからの着想だろうか。

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今治市公会堂にはたまたまホホホ座で一緒になった友人たちと訪れたのだが、彼によると、今治タオルの染色技術には高いものがあるが、ブランディングの過程でそぎ落とされたという。確かに品質を訴求する上で「白」は強いよなあ、とは思うものの、インスタレーションにより色の美しさ、そして丹下建築の良さを再認識する機会となった。

スペイン旅行記④ ガウディ建築巡礼とカタルーニャ音楽堂 -バルセロナ(2)

前回までの記事はこちら。

スペイン旅行記① 準備編

スペイン旅行記② アルハンブラ宮殿 -グラナダ

スペイン旅行記③ 飛ばない、飛行機 -バルセロナ(1)

 

バルセロナには夜に到着したので、食事をしてすぐ就寝。翌日はバルセロナの建築を巡る一日だった。この一日で訪れた建築やバルセロナの都市についてまとめておこうと思う。

 

バルセロナ・グリッドパターン

バルセロナは都市計画においても他の大都市には無い魅力があるように思う。19世紀に行われた都市計画は現在にも引き継がれているが、学生の頃に目にした、グリッドパターンで区画された空撮のインパクトが大きく、その都市のありようについては実際に確認してみたかった。


このグリッドパターンに至る経緯について簡単におさらいしておくと、バルセロナは地中海の植民地を起源とし、囲壁に囲まれた市街地から始まっている。そして都市の拡張に伴って壁を拡張しながら街区を広げているが、19世紀に入り衛生問題等の都市問題が顕在化したため、囲壁を壊して近代都市を建設することになった。その際に計画を行うこととなったのが、中央政府からの任にあたっていた土木技師セルダである(1859)。

 

セルダは計画にあたり、パリのようなドラマティックな空間を志向する計画では工場労働者であふれかえっている都市問題を解決できないと考え、まず測量による精緻な地図を作製した上で、資本家、労働者、商人など様々な人が混じりあって同じ街区に住む市街地を思い描いたという。区画を形成するグリッドは113.3m角で、20mの道路を挟んで碁盤の目のように整然と並んでいる。

 

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画像はGoogleマップより

画像右下の入り組んだエリアがゴシック地区と呼ばれる旧市街で、かつて囲壁に囲まれていたエリア。グリッドパターンのエリアとは対照的。

 

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「グリッド」の区画の内側

グリッドに分割された街区はどのようになっているのかというと、グリッドの外周に建物が立ち並び、その内側に共有の中庭(パティオ)を確保しているようだった。建物の皮で中庭のあんこを包むような構造。

ただ、実際には中庭の部分を低層の建物が占めてしまっている例が多数見られた。これに対して、1980年代以降、パティオを再生させる取り組みが行われているようだ*1

 

モデルニスモ建築

アントニ・ガウディが活躍したのはこの都市計画以降で、19世紀末から20世紀初頭にかけて建築を残している。この時代のバルセロナでは、モデルニスモという19世紀末にはじまった装飾的表現にあふれた芸術運動が起こっていて、ガウディの有機的な建築もこの様式として位置付けられる。ガウディだけではなく、モンタネールやカダファルクといった建築家もまた、モデルニスモとして位置付けられる有機的な建築物を残している。

 

サグラダ・ファミリア

アントニ・ガウディによるサグラダ・ファミリアバルセロナの中心部の「グリッド」の1区画を占めている。

サグラダ・ファミリアを訪れると外観にまず圧倒された。そのフォルムもさることながら、外部を埋め尽くす装飾からも異様な雰囲気が漂っている。

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現地で借りられるオーディオガイドがその装飾のひとつひとつを詳細に説明してくれたのだが、要するにサグラダ・ファミリアは聖書を建築化したものだということだ。宗教画に聖書の内容が描かれるのと同じように、建築を埋め尽くす装飾の一つ一つにも背景には聖書がある。

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ただ、サグラダ・ファミリアの造型の特徴は、彫刻的なデザインのみならず、自然から導かれた美学や構造的な合理性にもある*2。ガウディの逆さ吊り構造模型は有名だが、サグラダ・ファミリアは自然への眼差しや構造上の合理性の上に成立している建築であり、今日にも通じる思想を持つ建築であると感じられた。

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生誕の塔にある螺旋階段

生誕のファサードのタワーにはエレベーターで50mほど上がり、螺旋階段をぐるぐると降りた。塔からはバルセロナの街を眺めることができた。

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ジャン・ヌーヴェルによるトーレ・アグバールが見える

 

地下の礼拝堂にはガウディが眠っている。また、ガウディやサグラダ・ファミリアに関する様々な内容を展示している。3Dプリンタなどが設置された作業場の様子もガラス越しに見学することができる。

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地下の作業場

 

グエル公園 [1914]

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バルセロナの中心部からタクシーで約20分。ガウディによるサグラダ・ファミリアと並び観光客が多く訪れるグエル公園バルセロナの街を見渡せる丘に築かれている。

実業家グエル氏による分譲住宅で、広場や道路のインフラとともに1900年から1914年の間に建造されたそうだが、買い手はつかなかったそうだ。ここにもサグラダ・ファミリアで見られたようなガウディの幾何学的な構造体を目にすることができたが、合理性というだけでは説明しがたい様々な装飾も点在して賑やかな印象を受けた。

 

 

カサ・ミラ [1910]

カサ・ミラの内部は博物館のようになっており、ひとり25ユーロを払って入場。

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中央を吹抜けとした集合住宅であることが分かる。1階から屋上に上がり、そこから降りて行くのだがこの屋上がすばらしかった。

 

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ガウディ自ら、サグラダ・ファミリアへの視点場となるようなアーチを作り演出してるのが面白い

屋上から降りると、ここもガウディの仕事を紹介する博物館のようなフロア。

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カサ・ミラの模型なども展示されている

このフロアは屋上を支える屋根裏で、薄く繊細なレンガでできたアーチ状の構造が特徴的だった。バルセロナの位置するカタルーニャ地方に伝えられてきたカタルーニャ・ヴォールト(カタラン・ヴォールト)という伝統的な構法であるらしい。

 

スイーツアベニュー [2009]

 

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余談だが、今回バルセロナで泊まったのはカサ・ミラのはす向かいに位置するスイーツアベニューというリノベーションされた(というかオフィスからのコンバージョンだそうだが)アパートメント・ホテルで、ファサードの改修設計を伊東豊雄さんが行っている。カサ・ミラと呼応するように波打ったファサードが特徴的で、ホテルのエントランスで伊東さんについても紹介されていた。

 

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思い出すと伊東さんが自らの建築について語る際にガウディについて触れることがあったが、ガウディの建築群を訪れることで、伊東さんの建築についても理解が深められたように思う。ガウディの有機的な形態には自然界の形態を構築するシステム的な思想による裏付けがあり、それは現代の建築を形作る思想に通底するように思われるからだ。



カタルーニャ音楽堂 [1908]

夜には、トーマス・ヘンゲルブロックによるモーツァルト・レクイエムの演奏を聴きにカタルーニャ音楽堂を訪れた。カタルーニャ音楽堂は普通に見学することもできるのだが、このような建築は使われているさまを観てみたかったし、著名な指揮者が来るとなるとなおさらなので、日本から事前に予約していった。 

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ご覧のとおり大盛況。ステージは狭いのだが、華やかな装飾に彩られた荘厳な空間が、指揮者、演奏者、観客と一体的になったさまがすばらしかった。

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ホワイエにあるカフェEl Foyer

建築は、ガウディの師でもあるモンタネール(リュイス・ドメネク・イ・モンタネール)によるもの。ガウディだけでない、モデルニスモ建築としての表現の深さを痛感する。

 

 

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演奏を聴いた後、IRATIというバルにてピンチョスをいろいろつまみながら飲む。昨日の予定変更を取り戻すだけでなく、いろいろ学び多い一日だった。

 

スペイン旅行記⑤ ミシュラン3つ星「ABaC」でランチ -バルセロナ(3) に続く。

*1:参考

https://www.machinami.or.jp/contents/publication/pdf/machinami/machinami055_7.pdf

*2:ただし本当にどこまで構造上合理的なのかは分からない。