スペイン旅行記③ 飛ばない、飛行機 -バルセロナ(1)

前回までの記事はこちら。

スペイン旅行記① 準備編

スペイン旅行記② アルハンブラ宮殿 -グラナダ

 

朝、グラナダのホテルを出発して空港へ。二晩お世話になったホテルをチェックアウトし、グラナダからマドリードを経由してバルセロナに向かう…予定だったのだが、空港で搭乗待ちをしていると、登場15分前に突然フライトキャンセルの表示が。

よく晴れているものの、どうやら天候の理由でフライトできないとのこと。旅の序盤からスケジュールが変更に。きっつー。

スペイン語で説明をしていたが分からないので後で聞くと、バスで近くのマラガまで向かい、飛行機に乗り換えるというので待つことに。しかし待てども来ないので30分後にもう一度聞いてみると、バスで直接マドリードに向かうことになったという。乗り換えはマドリードで聞いてくれとのこと。マドリードまで何時間かかるんだろう。今日中に乗り換えてバルセロナに着くのかな…。

ということでバスを待つこと1時間ちょっと。11時半にバスはマドリードに向けて出発。
予定変更は厳しいが、バスの車窓を眺めるのは好きなので楽しみでもあった。バスは道中、オリーブの木々が並ぶ緩やかな丘を延々と進んでゆく。しかし進んでも進んでもひたすらオリーブ畑だったので飽きた。

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グラナダマドリードの道中


13:30頃から30分休憩し、14時に再び出発。

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途中立ち寄ったドライブイン


マドリードに近づくと、途中、車窓から風車の並ぶ風景が見えた(後で調べると有名なラ・マンチャの風車群だった)。マドリード バラハス空港には16:30着。結果5時間のバス旅だった。この時間にはバルセロナグエル公園にいる予定だったのだがやむを得ない。

空港で乗り換えについて相談して18:50発の便に振り替えてもらい、20:00にバルセロナ着。ホテルにチェックインして、近くのレストランで食事。セルベセリア カタラナという人気店。とにかくホッとして就寝。

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食事はホテル近くのCerveceria Catalana(セルベセリア・カタラナ)で


後日談だが、このフライトキャンセルに関連して予定が変更になったため、いくらかの損害に対しあらかじめ掛けていた海外旅行保険の保険金を請求した。しかし、フライトキャンセルとなっても代わりの便(=バス)が6時間以内に手配された場合は、フライトについては保険の対象外となるそう。ただし、同日に訪れる予定だった、手配済みのグエル公園のチケットが無駄になってしまったので、この分を海外旅行保険で補償してもらうことになった。たかだか2000円くらいの話である。

 

スペイン旅行記④ ガウディ建築巡礼とカタルーニャ音楽堂 -バルセロナ(2) に続く。

スペイン旅行記② アルハンブラ宮殿 -グラナダ

前回の記事はこちら。

スペイン旅行記① 準備編

 

 

スペインに向けて出発。

松山を出発し、羽田を経由して昼12時過ぎに成田を発って13時間。スペインにはイベリア航空による羽田⇔マドリードの直行便があり、直行便で19時前に飛行機は定刻通りマドリード バラハス空港へ到着。まずこの空港がすごかった。

 

マドリード=バラハス空港(ターミナル4)[2005]

マドリード=バラハス空港は到着するなりダイナミックな空間に圧倒される。この空港の設計はリチャード・ロジャース。天井の曲面が連続し、端々まで波が連なる空間がすごい。その屋根を支える鋼材も、塗装色が赤からオレンジ、グリーン、ブルーとグラデーションしており、自分の居場所も認識しやすい。サインカラーもこの色に合わせられている。機能的で、美しい。天井には、吊下げて天井を照らす間接照明が用いられている。

鋼材・曲面天井・照明を反復したシステマティックな構成により空間美が生み出されている。旅の高揚感マシマシ。

 

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乗り換えもスムーズで、グラナダには夜22:30に着陸。空港からタクシーに乗り、中心市街地まで20分。ホテルに到着して就寝。

 

翌日はグラナダの街を歩きまわり、アルハンブラ宮殿を訪れ、夜にフラメンコを見た。

 

グラナダの街

グラナダは約25万人の都市で、中心市街地は歩き回れる親しみやすい規模。

初めに訪れたのは、街の中心部あるグラナダ大聖堂。16~18世紀にかけて建てられた、スペインで最初のルネサンス様式の大聖堂とのこと。

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グラナダ市街地

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グラナダ大聖堂

アルハンブラ宮殿とともに世界遺産に登録されたアルバイシンという地区は1000年以上のイスラム居住区で、イスラム時代の街がそのまま残っており、入り組んだ細い道が坂を這うように作られている。コカコーラの看板も景観への調和に配慮した青いもの。この地区の高台にあるサンニコラス展望台からのアルハンブラ宮殿の眺めも素晴らしく、街の中でアルハンブラ宮殿を見るための工夫がなされているように思われた。展望台のある広場も簡素なものだが、柵が無く、腰かけの代わりになる縁石がぐるりと囲んでいる。

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アルバイシン地区(アルハンブラ宮殿より)

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サンニコラス展望台

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アルバイシン地区にあるコカコーラのサイン

 


アルハンブラ宮殿

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アルハンブラ宮殿には事前にチケットを予約していたので、15時前に到着。
アルハンブラ宮殿は広く、王宮、カルロス5世宮殿、アルカサバ(城塞)、ヘネラリフェ(離宮)の4つから構成。彫刻の細やかさがすごかった。廻廊や天井の作り方も面白い。

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洞窟住居(クエバ)でのフラメンコ

フラメンコで訪れたロス・タラントスは丘に横穴を掘ったかつての洞窟住居(クエバ)を利用している。フラメンコはこのアンダルシア発祥だが、ロマ族とアンダルシアの文化との融合とされるようだ。この洞窟住居のあるサクロモンテにはロマが多く住んでいたのだそう。

エバの中、近距離で刻まれるリズムと挙動を全身で感じながら、そのリズミカルな拍子と動きの奥深くに刻まれた、ロマ迫害の歴史を思った。

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スペイン旅行記③ 飛ばない、飛行機 -バルセロナ(1)  に続く。

スペイン旅行記① 準備編

妻との新婚旅行ということで、1月末~2月にかけてスペインを訪れた。

 

スペイン行きを決めるまで

新婚旅行はどこがいいのか?こんなに休める時間はなかなか取れないだろうから、アジア圏ではなくもう少し遠くに行きたい。個人的には長く滞在したアフリカ・エチオピアも再訪したいところだが、妻と一緒に楽しめるところではなさそう。

建築と食、どちらも楽しめるところがいい。陽気なところがいい。それじゃ地中海か?イタリアは過去に訪れた。スペインや南仏、ギリシャあたり…それじゃ、やっぱりスペインかな?

ガウディの建築は実際に見てみたいし、イスラム建築の最高峰といわれるアルハンブラ宮殿もある。現代建築としては、ビルバオグッゲンハイム美術館には一度訪れなければならないと思うし、その建築やアートが街にどんなインパクトを与えているのかも実感したい。バスク地方の食事も楽しみたい。サン・セバスチャンのバルめぐりもしてみたい。そうそう、スペインといえばレコンキスタだ。イスラム教とキリスト教それぞれの文化が交わる、そうした過程を経て具体化した建築や文化を目の当たりにしたい。バックグラウンドの異なる文化の邂逅は私自身、興味があるところだ。あ、これはなんだか新婚旅行っぽい。

 

ということで妻と話しあってスペインに行くことにした。実は南仏も周れるといいなと思っていたけど、計画を立てるとスペインだけで目いっぱい。あまりたくさん飛び回る旅程も疲れるのでエリアを絞ることにして、

グラナダイスラム文化・建築の残る都市、アルハンブラ宮殿

バルセロナ:ガウディ建築、都市の魅力

ビルバオサン・セバスティアングッゲンハイム美術館と食

この3地域を巡ることにした。

マドリードコルドバ、イビザ島や人に聞いたことがあるサラマンカにも行ってみたかったけど、人生でまた機会があれば行こう。旅先ではどうしても行き残しが生じてしまうが、このことを残念に思うことはない…といつも思っている。そういう行き残した場所があれば、その土地を再訪するきっかけになるし、またその土地のことを思い出す。そういうのも旅が後になって作り出す財産のようなものだ。もっとも、旅先でぎゅうぎゅうにスケジュールを詰め込むと疲れてしまう。

 

マーカーでプロットしているのは 実際に訪れたところ。

 

アルハンブラ宮殿サグラダ・ファミリアなどは事前手配を

いつもなら航空券やホテルも自分で手配するけど、航空券は旅行代理店にお願いすることにした。ホテルも行きたいところをピックアップして代理店に予約だけしてもらった。

スペインの有名な観光地はどこも混雑するらしいので、これは事前に予約することにした。あと、ちょっといいレストランも。いずれもwebから時間を指定して予約できるので、これは便利だった。予約サイトは下記のとおり(英語)。

 

アルハンブラ宮殿の予約サイト(英語)

tickets.alhambra-patronato.es

サグラダ・ファミリアの予約サイト(英語)

tickets.sagradafamilia.org

グエル公園の予約サイト(英語)

www.parkguell.cat

あと、下記のページが日本語で詳しく解説してくれて便利です。

onna-hitoritabi.comonna-hitoritabi.com

スペイン旅行記② アルハンブラ宮殿 -グラナダに続く。

 

道後オンセナート2018『街の中の雲』

2月23、24日の週末は道後オンセナート2018 地元プロジェクト『街の中の雲』で道後へ。担当者として手伝いに。

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『街の中の雲』

『街の中の雲』は元々オンセナートのためにデザインされたものではなく、前年の「移動する建築」という松山で行われた建築コンペでの受賞作品が元。デザインはバンバタカユキさん。それを道後オンセナートの作品として、2018年8月と今回の二度あげることができた。運営の主体は、もともとのコンペを仕掛けた松山アーバンデザインセンター。雲の中身はヘリウムガス(一部空気)を充てんした10個の大きな風船で、帝人が技術協力した軽くて丈夫な特殊な幕で覆われている。

また考えてみたいことではあるが、今回の道後オンセナート2018は、全体の中での核となるような作品が見られなかった代わりに、地元でのプロジェクトが(半ばゲリラ的に)行われ、それぞれに小規模ながら盛り上がりを見せていたように思う。外からのアーティストのアイデアを、地元の人々の手で「形」にした本作品もその好例だろう。

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『街の中の雲』

雲が道後温泉別館 飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)の中庭に登場しゆらゆら揺れては移ろい、雲と地面との距離が揺れ動き、人の活動にも影響を及ぼす。様相が絶えず変化しているその情景は自然のよう。それが雲という形を伴って可視化されたとも見てとれる。

 

道後オンセナート2018も今日で会期を終える。

小林博人・三島由樹 講演「社会や景観に働きかける新しい空間デザインのアプローチ」(2)

(前回の内容はこちら

「参加型建築のすすめ」

三島由樹さんの次に行われた小林博人さんによる講演のテーマは「参加型建築のすすめ」。

小林さんの近年のプロジェクトを見聞きしていなかったが、2011年の震災以降、CNCなどのデジタルファブリケーションを用いてべニアと部材のパーツを製作し、職人ではなく学生の手でべニアハウスを組み立てる「べニアハウスプロジェクト」を進めているとのこと。

このプロジェクトは学生の手で組み立てることを目指し「南三陸コミュニティハウス」からスタートしたものの、当初は部材のパーツが100種類ほどあり、施工(組立)時の食い違いが多く大変だったという。それからプロジェクトを一つずつ進めていく中で、部材は6種類まで減らし、学生の手でも簡単に組み立てられるようになったそう。

www.veneerhouse.com

小林さんが教鞭をとる慶應SFCでは、学生の参画によって大学内に施設を作るプロジェクト(SBC)も進められているそうだ。

sbc.sfc.keio.ac.jp

実は修士の頃に、授業の一環で行われたデザインスタジオで小林さんに指導して頂いたことがあったので、終了後の懇親会で近況を報告。もう15年近く前なのに昔のことを覚えていただいていて嬉しい。

小林博人・三島由樹 講演「社会や景観に働きかける新しい空間デザインのアプローチ」(1)

建築家の小林博人さん、ランドスケープ・アーキテクトの三島由樹さんが松山で講演をされるというので拝聴。

 

まずはランドスケープデザイナーの三島由樹さんから。一般の聴講者が多く占める中、三島さんは「ランドスケープ」「ランドスケープデザイン」という概念を三島さんの解釈を通じて分かりやすく説明。ニューヨークのセントラルパークをデザインしたFrederick Law Olmstedを引き合いに「ランドスケープデザインは緑のデザインではなく社会のデザインである」としたうえで、ご自身のプロジェクトを紹介された。

 

AJIROCHAYA

東京・八王子にある「AJIROCHAYA」は八王子駅から徒歩約5分、ユーロード沿いにある店舗等の複合施設。老舗の茶商があったものを蔵などを残しながら建て替えたそう。イベントなども行われている。

ajirochaya.com三島さんが「公園と庭と畑のあいだ」と語るこのプロジェクトは敷地内に路地が通されており、建物の外側を含めて丁寧にデザインが施されている印象。例えばこの道にも鉄平石(しかもしっかりと面取りをされている。こうすると歩きやすいそうだ)を敷き詰めている。敷地内は通り抜けることができ、槇文彦さんによるヒルサイドウエストを思い出す。建物のあいだでアクティビティを誘発するデザイン。

どこかで見たことがあると思ったら、三津浜を拠点とするアーティスト・海野貴彦さんらさんによるイベントが先日行われていたばかりなのを思い出した。

 

三島さんは最後に空海による「自利利他」という言葉を紹介されていた。私自身、空海はドボクの人だと捉えているが、「八十八箇所」というのも壮大なランドスケープデザインと見て取ることができそうだ。

 

三島さんが代表を務めるFOLK

www.f-o-l-k.jp

京都の建築 ブルーボトルコーヒー京都カフェほか

富山の帰りに京都を訪れた。京都は今年二度目だが、前回は建築を見る機会がなかったのでいくつかの建築を訪れた。

 

ブルーボトルコーヒー京都カフェ [2018]

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プロジェクトの参考に、ブルーボトルコーヒー京都カフェ(設計:長坂常 / スキーマ建築計画)に立ち寄った。

古建築からどんどんそぎ落とし、引き算してゆく手法。1階の床がごっそりはぎ取られており、庭と一続きのフラットな空間を構成している。建物というより庭園の東屋よろしく公園のような雰囲気である。

二階は客席ではなくいわゆる管理側の空間であるようだが、客席との一体的な感じも悪くない。

ラワン合板を張ったざっくりとした壁も現代的でブランドのイメージに合う。床は訪れるまで土間コンクリートだと思っていたが、テラゾーだった。カフェカウンターと一体的に仕上がっていたのが美しく、後で調べると原田左官工業所のビールストーン。薄塗も可能で目地なしでも割れにくいそう。

 

ロームシアター京都 [2015(改修)]

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京都会館あらためロームシアター京都(改修設計:香山壽夫建築研究所)。京都会館を訪れたのは学生の時だから17,8年ぶりくらいだろうか。改修の可能性を再認識させる建築。
蔦屋書店2階でレストランとして営業しているモダンテラス京都で朝食をとった。

 

虎屋菓寮 京都一条店 [2009]

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虎屋菓寮 京都一条店(内藤廣内藤廣建築設計事務所)。新旧の良さを併せ持つ現代的な空間は虎屋のコンセプトにもよく合い、内藤廣さんの空間デザインが企業ブランディングとの親和性が高い。庭園との繋がりが心地よい。ギャラリーの空間は未見。