道後オンセナート2018『街の中の雲』

2月23、24日の週末は道後オンセナート2018 地元プロジェクト『街の中の雲』で道後へ。担当者として手伝いに。

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『街の中の雲』

『街の中の雲』は元々オンセナートのためにデザインされたものではなく、前年の「移動する建築」という松山で行われた建築コンペでの受賞作品が元。デザインはバンバタカユキさん。それを道後オンセナートの作品として、2018年8月と今回の二度あげることができた。運営の主体は、もともとのコンペを仕掛けた松山アーバンデザインセンター。雲の中身はヘリウムガス(一部空気)を充てんした10個の大きな風船で、帝人が技術協力した軽くて丈夫な特殊な幕で覆われている。

また考えてみたいことではあるが、今回の道後オンセナート2018は、全体の中での核となるような作品が見られなかった代わりに、地元でのプロジェクトが(半ばゲリラ的に)行われ、それぞれに小規模ながら盛り上がりを見せていたように思う。外からのアーティストのアイデアを、地元の人々の手で「形」にした本作品もその好例だろう。

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『街の中の雲』

雲が道後温泉別館 飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)の中庭に登場しゆらゆら揺れては移ろい、雲と地面との距離が揺れ動き、人の活動にも影響を及ぼす。様相が絶えず変化しているその情景は自然のよう。それが雲という形を伴って可視化されたとも見てとれる。

 

道後オンセナート2018も今日で会期を終える。

小林博人・三島由樹 講演「社会や景観に働きかける新しい空間デザインのアプローチ」(2)

(前回の内容はこちら

「参加型建築のすすめ」

三島由樹さんの次に行われた小林博人さんによる講演のテーマは「参加型建築のすすめ」。

小林さんの近年のプロジェクトを見聞きしていなかったが、2011年の震災以降、CNCなどのデジタルファブリケーションを用いてべニアと部材のパーツを製作し、職人ではなく学生の手でべニアハウスを組み立てる「べニアハウスプロジェクト」を進めているとのこと。

このプロジェクトは学生の手で組み立てることを目指し「南三陸コミュニティハウス」からスタートしたものの、当初は部材のパーツが100種類ほどあり、施工(組立)時の食い違いが多く大変だったという。それからプロジェクトを一つずつ進めていく中で、部材は6種類まで減らし、学生の手でも簡単に組み立てられるようになったそう。

www.veneerhouse.com

小林さんが教鞭をとる慶應SFCでは、学生の参画によって大学内に施設を作るプロジェクト(SBC)も進められているそうだ。

sbc.sfc.keio.ac.jp

実は修士の頃に、授業の一環で行われたデザインスタジオで小林さんに指導して頂いたことがあったので、終了後の懇親会で近況を報告。もう15年近く前なのに昔のことを覚えていただいていて嬉しい。

小林博人・三島由樹 講演「社会や景観に働きかける新しい空間デザインのアプローチ」(1)

建築家の小林博人さん、ランドスケープ・アーキテクトの三島由樹さんが松山で講演をされるというので拝聴。

 

まずはランドスケープデザイナーの三島由樹さんから。一般の聴講者が多く占める中、三島さんは「ランドスケープ」「ランドスケープデザイン」という概念を三島さんの解釈を通じて分かりやすく説明。ニューヨークのセントラルパークをデザインしたFrederick Law Olmstedを引き合いに「ランドスケープデザインは緑のデザインではなく社会のデザインである」としたうえで、ご自身のプロジェクトを紹介された。

 

AJIROCHAYA

東京・八王子にある「AJIROCHAYA」は八王子駅から徒歩約5分、ユーロード沿いにある店舗等の複合施設。老舗の茶商があったものを蔵などを残しながら建て替えたそう。イベントなども行われている。

ajirochaya.com三島さんが「公園と庭と畑のあいだ」と語るこのプロジェクトは敷地内に路地が通されており、建物の外側を含めて丁寧にデザインが施されている印象。例えばこの道にも鉄平石(しかもしっかりと面取りをされている。こうすると歩きやすいそうだ)を敷き詰めている。敷地内は通り抜けることができ、槇文彦さんによるヒルサイドウエストを思い出す。建物のあいだでアクティビティを誘発するデザイン。

どこかで見たことがあると思ったら、三津浜を拠点とするアーティスト・海野貴彦さんらさんによるイベントが先日行われていたばかりなのを思い出した。

 

三島さんは最後に空海による「自利利他」という言葉を紹介されていた。私自身、空海はドボクの人だと捉えているが、「八十八箇所」というのも壮大なランドスケープデザインと見て取ることができそうだ。

 

三島さんが代表を務めるFOLK

www.f-o-l-k.jp

京都の建築 ブルーボトルコーヒー京都カフェほか

富山の帰りに京都を訪れた。京都は今年二度目だが、前回は建築を見る機会がなかったのでいくつかの建築を訪れた。

 

ブルーボトルコーヒー京都カフェ [2018]

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プロジェクトの参考に、ブルーボトルコーヒー京都カフェ(設計:長坂常 / スキーマ建築計画)に立ち寄った。

古建築からどんどんそぎ落とし、引き算してゆく手法。1階の床がごっそりはぎ取られており、庭と一続きのフラットな空間を構成している。建物というより庭園の東屋よろしく公園のような雰囲気である。

二階は客席ではなくいわゆる管理側の空間であるようだが、客席との一体的な感じも悪くない。

ラワン合板を張ったざっくりとした壁も現代的でブランドのイメージに合う。床は訪れるまで土間コンクリートだと思っていたが、テラゾーだった。カフェカウンターと一体的に仕上がっていたのが美しく、後で調べると原田左官工業所のビールストーン。薄塗も可能で目地なしでも割れにくいそう。

 

ロームシアター京都 [2015(改修)]

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京都会館あらためロームシアター京都(改修設計:香山壽夫建築研究所)。京都会館を訪れたのは学生の時だから17,8年ぶりくらいだろうか。改修の可能性を再認識させる建築。
蔦屋書店2階でレストランとして営業しているモダンテラス京都で朝食をとった。

 

虎屋菓寮 京都一条店 [2009]

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虎屋菓寮 京都一条店(内藤廣内藤廣建築設計事務所)。新旧の良さを併せ持つ現代的な空間は虎屋のコンセプトにもよく合い、内藤廣さんの空間デザインが企業ブランディングとの親和性が高い。庭園との繋がりが心地よい。ギャラリーの空間は未見。

TOYAMAキラリ、ショウワノート高岡工場

TOYAMAキラリ [2015] (設計:隈研吾

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ショウワノート高岡工場 [2018] (設計:能作淳平+佐藤工業

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TOYAMAキラリはすっかり日本を代表する建築家の筆頭となられた隈研吾氏の設計による公共建築。市街地再開発事業の一環。富山市立図書館本館、富山市ガラス美術館、富山第一銀行本店から成る。公共建築と銀行が同居するのが面白いが、デザインのアレコレはともあれ、よくこんな公共建築ができたなと感心する。

公共建築の用途をどのように複合するか、そのあたりの統廃合のあり方が近年、というかこれからの公共建築の肝だろうか。先日、高知のオーテピアを訪れたが、オーテピアの場合は図書館と科学館による建築で、さらに県と市の共同によるものだった。

 

高岡は氷見への道中に立ち寄っただけだが初めて訪れた。

ショウワノート高岡工場は、現在進行中のプロジェクトで使用しているノコギリ屋根のかたちについても参照したかったのだが、アイコンとして効いているのが分かった。

(たぶん)二度目の富山

11月に富山を訪れた。

富山には一度訪れた記憶があるが、宿泊するのは初めてだと思う。

 

ねんりんピックが行われている影響だろうか。富山市は宿泊・飲食ともにいっぱいで、富山駅からほど近い「吟魚」は早い時間だけ空いていた。白海老の天ぷら、刺身、カニなめこなどをいただいた。海のものも山のものもうまい。日本酒もいろいろ飲んだが、二人で10000円払ったらおつりがあった。富山の居酒屋恐るべし。

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ブラックラーメンも食べてみたがこちらはあまり口には合わなかった。B級グルメにもいろいろある。

 

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中心市街地はコンパクトで、トラムでぐるり周れる規模。コンパクトシティを標榜しているだけはある。富山城もコンパクトで城跡の公園もいいサイズだった。

駅の北側にはカナルパークという運河沿いの公園があるが、こちらには行けなかった。「世界一美しいスタバ」も気になるのでまた訪れた際は行ってみよう。